ユウキ:「うぅ。うぅ。なんだこれ?一体どうしたんだよオレの身体・・」
なぜだか体が言うことを聞かない。全く動かせないのだ。
寝相が悪くてしびれてしまったのか。
だんだん恐怖が込み上げてくる。
しばらくそんな状態が続いていると
どこからともなく黒い影がどんどんオレに近付いてくる。
ユウキ:「ん?誰だ?うわー近付くな」
オレの名前はユウキ。今年の春から大学に進学し、念願の1人暮らしをしている。
大学から徒歩8分のオレん家は、ワンルームだけど広々とした部屋が自慢。
友達を呼んで、よく「たこ焼きパーティー」をすることもある。
そんなある日、オレが大学に行こうと家を出ると、なんだか周りが騒がしい。家の前に救急車が止まっているようだった。
ユウキ「なんだ?!何かあったのかな?」
いつもと違う雰囲気に一瞬気を取られたが、立ち止まっている暇はない。今日もちょっと寝坊したから早く大学に行かなくてはいけない。
ユウキ「ちくしょう、またこんな時間か。また授業に遅れちまう」
救急車のことは気になったが、慌てて大学へ向かう。
大学での勉強はまぁまぁ順調だ。気の合う友達も出来て、毎日充実している。今日は友達4人で晩ご飯を食べに行った。
大学の周りには学生向けの飲食店がたくさんある。特に1人暮らしの学生には嬉しい。4人で行きつけの中華屋さんに行き、今日も大学の話で盛り上がった。
まだまだ話がしたかったが明日も朝から講義が入っている。残念だが今日は早々と解散した。
帰宅後、オレは楽しかった1日を思い出しながら布団へと入る。疲れていたのかすぐに眠りについた。
何時間眠っただろうか。ふと目が覚めた。まだ外は暗い。どうやら朝ではないようだ。今、何時だ?時計を見ようとして何か異変に気付いた。
ユウキ:「うぅ。うぅ。またかよ!なんだよ・・」
意識はあるが、また体が言うことを聞かない。手も足も全く動かせないのだ。
寝相が悪くてしびれてしまったのか?そう思って5分ほど安静にしていたのだが、体はしびれてなどおらず依然として動かせない。
ユウキ:「なんでだよ。このまま動かなかったらどうしよう」
だんだん恐怖が込み上げてくる。頭の中で余計なことをグルグル考える。
何か変なものでも食べたか?昨日走ったのがダメだったのか?とにかく原因が分からない。少しずつ緊張してきて、変な汗をかいている。恐怖や不安がピークに達した時、そのまま意識がなくなった。
気が付くと次の日の朝だった。体はいつも通りに動く。
ユウキ:「あー良かったー!」
夢だったのか?それとも金縛りなのか?そんなことを考えながら今日も大学で講義を受けていた。今までこんなことは体験したことがなかった。あんな恐怖はもぅ2度と味わいたくない。
しかし、あの金縛りは夢などではなかった。あの日から毎日のように夜寝てから同じことが繰り返された。体が全く動かない。どうしても動かせない。やっぱりこれは金縛りだと思った。眠れない日が続く。
マサオ:「ユウキ、どうした?大丈夫か?」
ユウキ:「ん?なんで?」
マサオ:「お前、最近、顔色悪いぞ」
ユウキ:「あ、あぁ。そうか・・」
マサオ:「何かあったのか?なんだか元気もないし、何か悩み事でもあるのか?」
ユウキ「実は最近、毎晩金縛りにあうんだ。なんだか眠れなくて・・」
心配した大学の親友、マサオが声を掛けてくれ、オレは初めて夜な夜な金縛りにあうことを友達に相談した。こんなこと誰にも言えなかったのだ。
マサオ:「金縛りってなんでなるんだっけ?」
ユウキ:「なんでだろう。そもそも原因ってあるのか?」
マサオ:「さぁー。分かんないけど。でもこのままじゃ絶対ヤバイよお前」
ユウキ:「そうだよな。そろそろ限界かも・・」
マサオ:「前と変わったことはあった?もしかしたら部屋に何かいるんじゃないのか?」
ユウキ:「いやいや。今まで何もなく過ごしてきたつもりだけど・・」
マサオ:「じゃあさ、お前の部屋の様子をビデオで撮ってみるっていうのはどう?」
ユウキ「寝ている姿をビデオで撮影か・・なるほど。確かに何か分かるかもな・・」
それから数日間、録画しようか迷っていたが、やはりその間も金縛りは止まらない。あまり乗り気ではないが仕方がないので、ビデオカメラを設置して自分の寝ている姿を録画してみることにした。
ベッドにカメラを向けて、その日初めて金縛りの様子を映す。
ユウキ:「何か映っていたらどうしよう」
そんな不安の中、その日も金縛りにあった。
ユウキ:「うぅうぅ。まただ・・」
うなされる。いつも通り体が動かない。なんでなんだろう。体が重たい。
ユウキ:「カメラには何か映るのだろうか。化け物とかだったらヤバイよな」
そんな苦しみの中、夜は更けていった。そして次の日の朝、ビデオカメラを止める。
講義が終わったらカメラを見てみよう。
大学の講義中もなんだかそわそわして、落ち着かなかった。
ユウキ:「早く学校が終わらないかな」
大学が終わるとすぐに帰宅した。早速カメラを再生してみる。見慣れた部屋に何の異常もない。
たまに寝返りを打つたびに少し緊張が走るが、寝ているオレはまだ気持ち良さそうだった。しかし、そろそろ金縛りにあうような気がする・・。
寝ているオレの顔がだんだんこわばっていく。ついに金縛りが始まったようだ。カメラの時間を見ると夜中の2時54分。体は動いていないが時計は順調に進んでいく。
ユウキ:「うぅ。うぅ・・」
うなっている。苦しそうだ。
そしてどこからともなく黒い影がどんどんオレに近付いてくる。
ユウキ:「なんだあれ」「うわ!オレに近付くな」
寝ているオレに何かがゆっくりと近付いてくるのだ。
真っ暗でよく見えない。
しかし落ち着いて目をこらしてじっと見る。ゴクリと自分のツバを飲む音が聞こえた。よくよく見ると手足がある。そして小さい。動物か妖怪か。
いや違う、どうやら子どものように見えた。するとその子どものようなものがオレの身体の上に乗った。手と足を伸ばして四つん這いになっている。オレの顔は引きつっている。
そしてそのまま時間は流れていく。何度見ても黒い影はやはり子どものようだった。何時間このままなのだろうか。試しに早送りをしてみる。
ふと子どもは急にいなくなった。慌てて巻き戻してその瞬間に戻る。子どもがいなくなる直前にカメラに子どもの顔が映った。その顔を見て心臓が止まるかと思った。見たことのある顔だったのだ。
ユウキ:「この子知っているぞ」「えーっとえーっと思い出せ」
「そうだ。この子コウスケくんじゃないか?!」
コウスケくんとは同じマンションに住む男の子。たまにボールなどで遊んであげていた小学生だ。
ユウキ:「なぜコウスケくんがオレの部屋なんかに…」としばらく考えて嫌な予感がした。すぐにこのマンションの管理人さんに電話した。
その嫌な予感は見事に的中した。どうやらコウスケくんはマンションの駐車場で遊んでいたところ、車にひかれて亡くなったようだ。
しかも最初に金縛りにあった日の朝。そういえばあの日救急車が来ていた。あの日このマンションで事故があったんだ。
ユウキ:「そうか、そうだったのか。コウスケくんはあの日死んじゃったんだ。まだ小学生だったのにかわいそうに。急に亡くなったから、まだ死を受け入れられなかったのだろう。まだまだ一緒にオレと遊びたかったんだろうな」
後日、事情を話してコウスケくんのお母さんとお墓参りに行った。
ユウキ:「どうか天国でも楽しく遊べますように」
その時に知ったのだが、救急車で病室に運ばれてからもコウスケくんは生死をさまよっていたらしい。そして亡くなったのが夜中の2時54分頃だったと。
その後金縛りにあうことはパッタリとなくなった。
ミーの解説
「こんばんは。管理人のミーです。今夜のお話はどうでしたか?
ユウキの金縛りは、同じマンションで亡くなった小学生のコウスケ君が原因でした。
突然の死をなかなか受け入れられず、ユウキの部屋に夜な夜な遊びに来ていたコウスケ君。
ユウキがお墓参りに来たことで、自分の死を受け入れたのかもう現れることはなかった・・という悲しいお話でした。
あなたは金縛りに会ったことがありますか?
もしあればその時の体験をコメント欄で教えてくださいね♪